No 27 ウルトラファインバブルがインスリンの経口吸収を促進する
超微細気泡(Ultra-Fine Bubbles, UFB)は、直径が1 μm未満であり、ブラウン運動の影響によって液体中で高い安定性を示します。その独自の物理化学的特性と多様な生物学的効果から、UFBは新規マテリアルとして幅広い産業および医療分野で注目されています。
UFBの特性の一つとして負の表面電荷が挙げられます。これは、正に帯電した腸内酵素の活性に影響を与えることで、ペプチド医薬の粘膜吸収を促進する可能性があります。代表的なペプチド医薬品であるインスリンは、従来、注射剤として投与されてきましたが、経口製剤化が強く求められています。本研究では、UFBを活用し、インスリンの経口吸収に与える影響を検討しました。
異なる濃度のUFB溶液をラットの腸内および経口の両方に投与して、インスリンの粘膜吸収に対する UFB の影響を調べました。 UFB 溶液は粘膜のインスリン吸収を促進しました。溶液中のUFBの数が増加すると、回腸と経口の両方のインスリン吸収が増加しました。このインスリン吸収の増加の原因となるメカニズムを特定するために、ペプシンおよびトリプシン溶液中でのインスリン分解を調べたところ、UFBの存在によってインスリン分解が遅くなることを発見しました。将来の健康への応用の可能性を検討するために、水中のUFBの生物学的安全性が評価されました。 UFB は、一般的な血液生化学パラメーターや臓器や粘膜の健康には影響を与えませんでした。
本研究は、UFBがインスリンの経口吸収を促進することを発見した世界で初めての研究であり、UFBの活用がインスリンをはじめとするペプチド医薬の経口吸収を促進する新たな薬物送達ツールとなることを示唆しています。
論文タイトル:Boosting the oral absorption of insulin using Ultrafine bubbles
(ウルトラファインバブルを用いた経口インスリンの吸収促進)
Int J Pharm (IF: 5.88; Q1). 2025 Feb 18:673:125378. doi: 10.1016/j.ijpharm.2025.125378.
PMID: 39978701
出典:経口インスリン製剤化に関する薬学部の武田真莉子教授らの研究論文が International Journal of Pharmaceutics誌にオンライン掲載されました
2025.2.25 神戸学院大学 トピックス&ニュースリリース
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