No 48 ブラベクト(MSD)、GoogleのAIがプライマリーケア医を凌駕する可能性

1)ブラベクト錠は世界に先駆けて、日本でそろそろジェネリックが登場するかもしれません。 2)人医療の世界ではAIの進歩は着実なようです。
M Tsuda 2025.04.12
誰でも
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  • MSD Animal Healthと共同研究開発を開始、フルララネルの長期供給契約を延長 ~ 日産化学

  • 人医療で、GoogleのAIがプライマリーケア医を凌駕する可能性

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1. MSD Animal Healthと共同研究開発を開始、フルララネルの長期供給契約を延長 ~ 日産化学

MSD Animal Healthと日産化学は、今後の動物用医薬品分野における両社の事業拡大を見据え、新規動物用医薬品創出に向けた共同研究開発を開始し、パートナーシップをさらに強化することに合意した。
また、MSD Animal Healthの外部寄生虫駆除薬ブラベクト、エグゾルトの有効成分であるフルララネルの長期供給契約を延長した。

出典:MSD Animal Health 社とのフルララネル供給契約延長のお知らせ
2025.4.11 日産化学 プレスリリース

【参考情報】

1) フルララネル化合物特許
- 2025年3月に終了するが、多数の国で延長制度あり
- UK、ドイツ、フランス等一部欧州諸国では、2029年2月まで延長済み。
米国は2027年6月まで延長済み。
出典:日産化学 2025年3月期 決算説明会(2025年2月7日)

国内特許

特許4883296
〔発明の名称〕イソキサゾリン置換ベンズアミド化合物及び有害生物防除剤 
〔存続期間満了日〕2025/3/4 

特許5321856
〔発明の名称〕イソキサゾリン置換ベンズアミド化合物及び有害生物防除剤
〔存続期間満了日〕2025/3/4 
特許4883296の分割出願(第1世代)

上記2特許は物質特許と思われます。用途特許や製剤特許については日産化学からの出願は無いようですが、インターベット/メルク(MSD)が出願しているのかもしれません。

2) ブラベクト錠 112.5mg、250mg、500mg、1000mg
再審査期間:2015.5.27~2021.5.26
2023.9.14の薬事・食品衛生審議会薬事分科会動物用医薬品等部会において、効能追加(イヌニキビダニの駆除による全身性毛包虫症の改善、イヌセンコウヒゼンダニの駆除)の承認を可とし、再審査期間2年として薬事分科会に報告となっています。
動物用医薬品データベース(2025.3.18更新)には再審査結果通知日の記載なし

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2. 人医療で、GoogleのAIがプライマリーケア医を凌駕する可能性

オール・アバウト・サイエンス・ジャパン 論文ウォッチ 4月12日記事
プライマリーケアへのGoogleの本気(4月9日 Natureオンライン掲載論文)で以下の内容が紹介されました。

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2025年4月9日にNature誌オンラインで発表された下記のGoogleの研究成果2報について論じています。

1) Towards accurate differential diagnosis with large language models
(大規模言語モデルによる正確な鑑別診断を目指して)
Nature (IF: 49.96; Q1). 2025 Apr 9. doi: 10.1038/s41586-025-08869-4.
PMID: 4020504

2) Towards conversational diagnostic artificial intelligence
(会話型診断人工知能に向けて)
Nature (IF: 49.96; Q1). 2025 Apr 9. doi: 10.1038/s41586-025-08866-7.
PMID: 40205050

Googleが「Articulate Medical Intelligence Explorer (AMIE)」という新しい医療AI診断モデルを開発し、その性能を上記の2報でNatureに発表しました。

AMIEの特徴

  • PaLM2トランスフォーマーモデルをベースに多様な疾患に関するQ&Aを学習

  • 病気に関するQ&Aデータで学習

  • 実際の診察室での会話をシミュレートし対話形式でファインチューニング

  • 画像データなどを学習に用いない点が特徴

論文の内容と結果

1)の報告では、NEJMのCPC(clinicopathological conference;臨床病理検討会)シリーズから作成した患者の訴えを、Lineのようなテキストチャット形式の医師と患者の会話で、可能性のある病気を考え、最終的に正しい診断に到達するプロセスを実際の医師とAMIEに行わせて、それぞれのパーフォーマンスを評価した。
結果はAMIEの圧勝で、プロンプトに従って患者の立場に立って医師とチャットした専門の俳優による患者としてのわかりやすさ、安心感など全てAMIEがベテランの開業医さんを凌駕している。
また、診断に到達するまでの過程を、専門家に評価させてた時もAMIEがほとんどの項目で勝っている。この結果から、最初の患者さんとの接点では、医師よりLLMの方が適切な対応が可能になることを示している。

2)の報告では、同じようにテキストから正しい診断に到達するまでの過程で、AMIEを医師の診断アシスタントとして活用する可能性を検証した。こちらの方は、症状を聞いて、病気を可能性の高い順にリストし、それを鑑別するための方法を明確に構想できるかを調べている。
1)の論文にあるように、AMIEと医師を比べるとAMIEが圧倒的に成績がいい。そこで、今度は医師に通常の検索、あるいはAMIEとの相談を通して鑑別診断してもらうと、AMIEを使った方が、一般の検索を加えて診断するより成績がいい。ただ驚くのは、それでもAMIE単独には負けている。おそらく、自分の最初の印象のバイアスが影響するのだろう。

医師からは、AMIEは検索するよりもよほど親切で分かりやすいとの評価があり、実用化がすぐであることを感じさせる。
また英語を用いているが、カナダとインドという状況設定までして、その実力の高さを誇示している。

論文ウォッチ 4月12日記事のポイント

  • Googleは、プライマリーケアにおけるLLM(大規模言語モデル)の活用に本腰を入れている。

  • AMIEは、医師と患者の最初の接点において、医師以上のパフォーマンスを発揮する可能性がある。

  • AMIEは、医師の診断アシスタントとしても有効であり、医療現場におけるLLMの可能性を示唆している。

  • このままマルチモーダルな、万能LLMへと進化するのだろう。

  • NHKの「総合診療医ドクターG NEXT」のような医療番組にAMIEが参加する事で、医療教育への貢献も期待できる。

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一般的に獣医師は人医療の医師とは異なり、様々な専門領域にまたがって、多岐にわたる医療行為を一人で行う必要があり、上記のプライマリーケア医師に相当すると考えられます。そのため、獣医師には包括的なスキルと知識が求められます。
獣医療でも学習に使えるデータセットがあれば、人の医師以上に必要とされる有用な診断支援システムが実現可能だと思われます。

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