No 49  MabGenesisがVirbacと提携;てんかんでのOne Health;飼い犬が環境に与える影響

MabGenesisは包括的にどこかと組むというより、分野ごと、抗体ごとにライセンスするという戦略なのでしょうか。
M Tsuda 2025.04.17
誰でも
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  • Virbacにイヌ疾患治療用抗体をライセンス ~ MabGenesis

  • イヌの脳波が人間のてんかん発作検出を助ける ~ Huazhong University of Science and Technology(華中科技大学)

  • 飼い犬が環境に与える影響 ~ Curtin University

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1. Virbacにイヌ疾患治療用抗体をライセンス ~ MabGenesis

Virbac (Carros, France)は、MabGenesis(横浜市)から新規治療用抗体のライセンスを取得したことを発表した。

本契約に基づき、Virbacは、犬の治療薬として可能性のある新規モノクローナル抗体を使用した製品を開発し、商品化する権利を有する。MabGenesiは、ライセンス料、開発段階に応じたマイルストーン、製品の販売に応じた一定のロイヤルティを受け取る。

出典:Virbac licenses MabGenesis’ therapeutic antibodies for canine diseases
2025.4.16 Virbac プレスリリース

ライセンス内容の詳細は不明です。
MabGenesisは詳細不明ながら、複数企業(Ceva、共立製薬、Boehringer Ingelheim)とイヌ モノクローナル抗体でライセンス契約を交わしています。

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2. イヌの脳波が人間のてんかん発作検出を助ける ~ Huazhong University of Science and Technology(華中科技大学)

この研究は、イヌとヒトといった異なる動物種の間、そして頭皮脳波(頭の外から記録する脳波)と頭蓋内脳波(脳の中に電極を入れて記録する脳波)といった異なる種類の脳波データの間で、てんかん発作の特徴がどのように似ているか、または異なっているかを調べたものである。この研究の目的は、一方の動物種や種類の脳波データから得られた知識を、もう一方のデータに応用できるようにすることである。

研究者たちは、てんかん発作時の脳波を、以下の3つの観点から詳しく調べた。

  • 時間的な特徴:脳波の波形が時間とともにどのように変化するか。例えば、発作中に脳波が大きく乱れるかどうかなど。

  • エントロピーの特徴: 脳波の複雑さや予測の難しさを示す指標。発作中に脳波の予測が難しくなる(エントロピーが増加する)かどうかを調べた。

  • スペクトル(周波数)の特徴:脳波に含まれるさまざまな周波数の成分とその強さ。発作中に特定の周波数の脳波が強くなるかどうかを調べした。

これらの分析から、イヌとヒトの頭蓋内脳波では、発作中に時間的、エントロピー的、そして周波数的な特徴に類似性が見られることがわかった。これは、これらの特徴が動物種を超えて共通している可能性を示唆している。さらに、イヌのてんかんは、発作の起こり方、症状、薬への反応など、ヒトのてんかんと多くの共通点を持っていることも知られている。

しかし、異なる動物種や異なる種類の脳波データを比較するには、いくつかの大きな課題がある。

  • 電極の配置の違い:犬とヒトでは、脳波を記録するための電極の数や配置が大きく異なる。例えば、犬の頭蓋内脳波では16個の電極が使われたのに対し、ヒトの頭蓋内脳波では6個しか使われていない場合がある。また、頭皮脳波と頭蓋内脳波では、電極の種類も記録方法も全く異なる。

  • データの特徴のずれ: たとえ同じような特徴を抽出しても、イヌとヒトの間ではその特徴の分布が大きく異なることがある。

  • データ収集方法の違い:脳波計の種類、データのサンプリング頻度、ノイズの入りやすさなども、動物種や記録方法によって異なる。

これらの違いがあるため、一方のデータでうまく学習したてんかん検出のAIを、そのままもう一方のデータに使うことは難しい。

そこで、研究者たちは、異なる動物種や異なる種類の脳波データ間で知識をうまく伝える(転移学習)ための新しい方法を開発した。この方法では、以下の3つのステップでデータのずれを修正し、共通の特徴を見つけ出す。

  • 入力空間の整列 (Euclidean Alignment): 特に頭蓋内脳波において、電極配置の違いによるデータの構造の違いを数学的に調整する。これは、異なるカメラで撮影した写真の歪みを修正して、同じように見えるようにするイメージである。

  • 特徴空間の整列 (Domain Adaptation):イヌとヒトの脳波データから抽出された特徴の分布を近づける。これは、異なる言語で書かれた文章を翻訳して、意味が同じになるようにするイメージである。

  • 出力空間の整列 (Knowledge Distillation): 一方のデータで学習したAIの知識を、もう一方のデータで学習するAIに教える。これは、熟練した獣医師の診断のコツを、経験の浅い獣医師に教えるイメージである。

さらに、ResizeNetという技術を使って、電極の数の違いにも対応できるようにした。これは、異なるサイズのパズルのピースをうまく組み合わせて、全体として意味のある絵にするイメージである。

この新しい方法(ResizeNet+MSA)を使うことで、一方の動物種や種類の脳波データが少ない場合でも、もう一方の豊富なデータを活用して、より正確に、てんかん発作を検出できるようになることが実験で示された。例えば、イヌの脳波データで学習したAIが、ヒトの脳波データでも高い精度でてんかん発作を検出できるようになったのである。

この研究成果は、てんかんの診断や研究において、異なる動物種や異なる種類の脳波データを統合して活用できる可能性を示唆している。特に、ヒトのデータが少ない稀なてんかんの研究や、動物のてんかんのより良い診断法の開発に役立つ可能性がある。また、大量の脳波データを集めて、より高性能な脳のモデルを開発するための基盤となることも期待される。

出典

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3. 飼い犬が環境に与える影響 ~ Curtin University

  • オーストラリア Curtin Universityの研究は、飼い犬が環境に与える悪影響を明らかにした。
    野生動物・生態系・気候への影響は広範囲に及ぶ。

  • 猫による環境破壊は広く研究されてきたが、犬も世界で最も一般的な大型肉食動物として、重大かつ多面的な脅威をもたらしている。

  • 飼い犬は野生動物、特に水辺の鳥類に悪影響を及ぼし、リードをつけていても追跡やにおい・排泄物が動物行動を妨げる。

  • 米国では、鹿やキツネ、ボブキャットなどが犬が頻繁に通る地域を避ける傾向が観察されている。

  • 犬の排泄物は水質汚染や植物成長の阻害を引き起こし、寄生虫予防の薬剤洗浄も水環境に有害な化学物質をもたらす。

  • ペットフード産業も大きな問題で、犬の数が多いために炭素排出量、土地・水資源の使用量が莫大になっている。

  • 持続可能な飼育の障壁として、環境配慮型のペットフードに追加費用を払う飼い主は12〜16%程度と少ない。

  • 一方で、犬は人間の大切な伴侶や作業動物としての価値もあり、対策にはバランスが求められる。

  • 多くの飼い主は犬が環境に与える影響を認識していないか、「自分一人の行動では変わらない」と考えている。

  • 解決には感受性の高い地域での犬の立ち入り制限だけでなく、飼い主・保全団体・政策立案者の連携による持続可能な飼育戦略の構築が必要。

出典:Man’s best friend may be nature’s worst enemy, study on pet dogs finds
(人間にとって最良の友は、自然にとって最悪の敵かもしれない)
2025.4.10 Curtin University, News

論文:Bad dog? The environmental effects of owned dogs
Pacific Conservation Biology 31, PC24071 Published: 10 April 2025
doi: 10.1071/PC24071

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