No 23 優れた徐放性を有するDNAハイドロゲル ~ 東京理科大

構成ユニットであるDNAナノ構造体の最小化・最適化に成功し、担持させた抗がん剤ドキソルビシンを徐放し、高い抗腫瘍作用を示しました。
M Tsuda 2025.02.13
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ポイント

  • DNAハイドロゲルは有望な薬物送達システム(DDS)として期待されているが、ゲルの構成ユニットであるDNAナノ構造体の形成には多種類の比較的長い核酸を必要とすることが、臨床応用に向けた課題であった。

  • 本研究では、2種類の短い核酸から構成されるDNAハイドロゲルの調製に成功した。

  • 開発したハイドロゲルは構造的に安定であり、担持させた抗がん剤を徐放し、高い抗腫瘍作用を示した。

  • 本研究で示されたDNAハイドロゲルの設計指針をもとに、低分子医薬品、抗原、細胞など、さまざまな生理活性物質に対する新たなDSS開発が進むことが期待される。

本研究では、1種類のODNで形成させたDNAナノユニットを2種類混合することで、DNAハイドロゲルを調製しました。さらに、ODNの長さを最小化するために、その構造と生体投与後の滞留性などのハイドロゲル特性との関係を評価することにより、生体滞留性に優れるDNAハイドロゲルに適したDNAナノユニットの条件を探りました。

その結果、わずか2種類の短いODNで調製可能なハイドロゲルを見出し、従来の方法よりも高純度かつ低コストで容易に作製できるようになると期待されます。さらに、ハイドロゲルの網目サイズが小さく、担持させた化合物の徐放に適していることも示唆されました。

マウスを用いた実験

1. マウス皮下投与における投与部位でのドキソルビシン(DOX)保持時間

DOX、DOXとDNAユニットの混合物(DOX/ユニット)またはDOX/DNAハイドロゲルを、40 μg DOX/マウス、100 μg DNA/マウスの用量でマウスの背部に皮下投与した。その後、所定の時点でDOXの蛍光を検出し、蛍光強度を定量した。

DOXの蛍光は急速に減弱したが、DOX/DNAハイドロゲルの蛍光は投与後少なくとも168時間持続した。このDOX蛍光の時間経過は、PI標識DNAハイドロゲルのそれと同程度であり、DOXがDNAユニットとともにDNAハイドロゲルから持続的に放出されたことを示している。

注入後の時間に対してプロットした蛍光シグナルの合計強度

注入後の時間に対してプロットした蛍光シグナルの合計強度

2. 担癌マウスへのDOXの腫瘍内投与による抗腫瘍効果

マウス腺癌colon26細胞を1×10^6個/マウスの密度でマウス背部に接種した。接種9日後、マウスはDOX、DOX/DNAユニット、DOX/DNAハイドロゲルのいずれかを、DOX 40 μg、DNA 100 μg/マウスの用量で腫瘍組織に直接投与された。7日後、再投与した。最初の投与から25日まで、マウスの腫瘍体積と体重を記録した。30日目にマウスを安楽死させ、腫瘍組織を摘出し、写真を撮った。

担癌マウスの腫瘍体積の時間経過では、DOX単独では腫瘍の成長をわずかに遅らせたが、DOX/DNAハイドロゲル投与では腫瘍の成長に対してより顕著な効果を示した。実験終了時に摘出した腫瘍組織の大きさも同様の結果を示した。

(C)腫瘍サイズ、(D)体重

(C)腫瘍サイズ、(D)体重

今後の課題

安全性の確認

  • 皮下投与では皮下組織に有意な変化、皮膚炎症は認められなかった。

  • 非免疫刺激性または免疫抑制性の配列を含むオリゴデオキシヌクレオチドは、DNAハイドロゲルの調製に採用することができ、免疫原性の潜在的なリスクを減らすことができる。

  • 今回のDNAハイドロゲルは従来のものに比べ、保持時間が長かったが顕著な炎症は観察されず、安全性が示唆された。

出典:



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