プレバイオティクス・プロバイオティクスの開発

藤田医科大と同大発のベンチャーBIOSIS Lab.を中心にプレバイオティクス・プロバイオティクス開発の企業-企業、企業-アカデミアの連携が進んでいるようです。
M Tsuda 2025.01.20
誰でも

関連情報

  • 伊藤忠製糖、藤田医科大学にプレ・プロバイオティクス共同研究講座開設(2022/7)

  • 犬のアトピー性皮膚炎に対するプレバイオティクスとプロバイオティクスを併用した新たな補助療法

  • 炎症性腸疾患に対する 新たな治療法の開発をめざす共同研究を開始 ~ 藤田医科大、ウェルネオシュガー、伊那食品工業

  • オリゴ糖と乳酸菌を用いることで ペンギンの腸内環境改善を実現

  • ペットの健康管理ツール!犬猫用腸内フローラ検査キット「PiTPET」を販売開始 ~ 株式会社株式会社PROUMED

  • バイオシスラボとの「プレ・プロバイオティクス」分野において業務提携を開始 ~ PROUMED

  • (株)FINAL ANSWER 獣医学分野におけるプレ・プロバイオティクスの活用を目指し藤田医科大学公認ベンチャーバイオシスラボとの本格的な業務提携を開始

  • 腸内細菌由来の遺伝子を用いた疾患リスク評価法を開発-免疫疾患・精神疾患の非侵襲的診断への応用に期待 ~ 藤田医科大

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1.  伊藤忠製糖、藤田医科大学にプレ・プロバイオティクス共同研究講座開設

伊藤忠製糖(現 ウェルネオシュガー株式会社:津田註)と藤田医科大学は、共同研究講座「医科プレ・プロバイオティクス講座」を開設する。腸内細菌叢(腸内フローラ)の働きが疾病やQOL(生活の質)にもたらす効果を医学的に検証する。乳酸菌関連ベンチャーなども研究に参画する。期間は2024年7月末までの2年間。
共同研究講座では各種疾病における細菌叢のディスバイオシス状態を調べ、その状態改善に適した藤田医科大学独自のプレ・プロバイオティクスによる介入試験を実施。同時に疾病モデルを用いた前臨床研究や細菌の遺伝子レベルでの基礎研究にも取り組む。

2022.7.23 食品新聞Web版より抜粋改変

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2. 犬のアトピー性皮膚炎に対するプレバイオティクスとプロバイオティクスを併用した新たな補助療法

藤田医科大学 消化器内科学 医科プレ・プロバイオティクス学の研究グループは、株式会社 FINAL ANSWER(神奈川県藤沢市)、ウェルネオシュガー株式会社(東京都中央区)との産学連携の取り組みで、プレバイオティクスとプロバイオティクスを併用により、犬のアトピー性皮膚炎に対する新たな補完治療効果の一端を得ることができた。

今回の研究では、アトピー性皮膚炎や生活習慣病改善効果が知られている三糖類のプレバイオティクスである「ケストース」と、乳酸菌の中でもアレルギー抑制効果が多数報告されている「Lactobacillus paracasei(ラクトバチルス パラカゼイ)」を組み合わせて摂取することで、アトピー性皮膚炎の治療に使われるステロイドの量が軽減し、症状も改善することが示された。オリゴ糖や乳酸菌の多様な疾患改善に及ぼす有用性は世界中で証明されているが、獣医学領域での展開は十分ではなかった。今後、獣医皮膚科の専門医と共同で、犬のアトピー性皮膚炎の治療時における新たな補完治療として展開できる可能性がある。

  • 被験動物:継続したステロイド治療において改善効果がみられないアトピー性皮膚炎に罹患している犬15頭

  • ステロイドとの併用によりタブレットとカプセル形式にてプレバオティクス・プロバイオティクスを90日投与

  • 投与前、投与後後 30、60、および 90 日目でのアトピー性皮膚炎スコア (CADLI) 、瘙痒視覚アナログスコア (PVAS) 、ステロイド使用量などを検証:
    CADLI、PVAS が有意に減少、90日間にわたる総プレドニゾン使用量が有意に減少。

投与前(0日)と投与後90日の臨床所見(雑種3歳オス)

投与前(0日)と投与後90日の臨床所見(雑種3歳オス)

研究成果は、に掲載された。
論文タイトル:Clinical effects of combined Lactobacillus paracasei and kestose on canine atopic dermatitis
(イヌアトピー性皮膚炎に対するLactobacillus paracaseiとkestoseの組み合わせの臨床効果)
Pol J Vet Sci. 2023 Mar;26(1):131-136. doi: 10.24425/pjvs.2023.145014.
PMID: 36961289

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3. 炎症性腸疾患に対する 新たな治療法の開発をめざす共同研究を開始 ~ 藤田医科大、ウェルネオシュガー、伊那食品工業

藤田医科大の炎症性腸疾患センターは、ウェルネオシュガー、伊那食品工業(長野県伊那市)と連携し、炎症性腸疾患に対するプレバイオティクスを用いた治療法を開発するための共同研究を開始した。炎症性腸疾患に対する食品を用いた臨床試験は国内ではほとんど行われていない。

藤田医科大では消化器内科学講座、医科プレ・プロバイオティクス講座が連携し、多角的な観点から医学とプレバイオティクスに関する研究を行っている中で、炎症性腸疾患に対する有効性を示すいくつかの研究データが、ウェルネオシュガーの持つケストースと、伊那食品工業の持つアガロオリゴ糖から得られたことから、産学連携で食品成分による炎症性腸疾患の治療・改善に向け研究を開始することとなった。

藤田医科大学病院では、2023年4月に炎症性腸疾患に対する専門的な治療を行う炎症性腸疾患センターを開設。医学的治療と並行して、プレバイオティクスを用いた改善効果を検証しており、近年、良好な予後が報告されている。

出典:2023.11.6  藤田医科大学プレスリリース
炎症性腸疾患に対する 新たな治療法の開発をめざす共同研究を開始

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4. オリゴ糖と乳酸菌を用いることで ペンギンの腸内環境改善を実現

藤田医科大 消化器内科学講座、医科プレ・プロバイオティクス学講座は、ウェルネオシュガーや神戸市立須磨海浜水族園などと連携し、オリゴ糖と乳酸菌を併用して摂取することでペンギンの腸内環境を改善し感染症を予防するとともに栄養吸収を促進させることを明らかにした。

  • 被験動物:3歳未満の若いペンギン8羽と17歳以上の成鳥ペンギン9羽

  • 3糖オリゴ糖であるケストースと、藤田医科大が岡山大学の乳酸菌ベンチャーである株式会社農(みのり)と開発した乳酸菌FM8™︎を併用して8週間摂取させた。その結果、若いペンギン群で腸内の善玉菌が増加し、両方の群で腸炎を引き起こすクロストリジウム菌(Clostridium perfringens)が減少した。

  • 若いペンギン群では炎症反応に関わるアルファグロブリンの血中濃度が増加。乳酸菌FM8は、炎症を抑えるサイトカインであるIL-10の分泌を促進することもわかった。

  • Ca、Mgなどの栄養素の吸収促進効果や炎症反応を抑制する効果が確認された。

鳥類を飼育する際、免疫学的にナイーブな幼鳥が、成鳥よりクロストリジウム腸炎に感染しやすいことが知られている。ケストースと乳酸菌FM8が特に若いペンギンの健康に役立つという発見は、動物の健康を維持するための新たな可能性を示している。さらなる研究を通じ、ケストースと乳酸菌FM8が、鳥類のみならず動物全体の健康、もしくは畜産・養殖業界の生産性向上を実現するメソッドとして確立をめざす。

研究成果は、Journal of Veterinary Medical Scienceに掲載された。
論文タイトル:Co-administration of the prebiotic 1-kestose and the paraprobiotic Lactiplantibacillus plantarum FM8 in magellanic penguins promotes the activity of intestinal Lactobacillaceae and reduces the plc gene levels encoding Clostridium perfringens toxin
(マゼランペンギンにプレバイオティクスである1-ケストースとパラプロバイオティクスであるLactiplantibacillus plantarum FM8を共投与すると、腸内乳酸菌の活性が促進され、Clostridium perfringens毒素をコードするplc遺伝子レベルが低下する。)
J Vet Med Sci. 2024 Feb 8;86(2):193-201. doi: 10.1292/jvms.23-0238
PMID: 38171739

出典:2024.2.28 藤田医科大学プレスリリース
オリゴ糖と乳酸菌を用いることで ペンギンの腸内環境改善を実現

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5. ペットの健康管理ツール!犬猫用腸内フローラ検査キット「PiTPET」を販売開始 ~ PROUMED

株式会社PROUMED(東京都港区)は、ペット(犬・猫)の便から疾患リスクや症状の発症リスクがわかるペット向けの腸内フローラ検査サービス「PiTPET」を2024年3月1日にリリースした。

PiPETの特徴

  • 自宅でできるペット向けの腸内フローラ検査サービス

  • 検体は便。便を送付するだけで検査が行える。

  • 日本国内業界最多の検査結果項目数

  • 従来の検査サービスでは知りえなかった疾患や症状の発症リスクを数値化し、最大29疾患6症状まで調べることができる。

  • 将来的な病気リスクやよくある症状の発症しやすさまで可視化されることで、より具体的な対策が可能になる。

  • 約8営業日で検査結果の確認が可能。

  • Webで確認できる検査結果レポートには、ペットの腸内フローラに合ったおすすめの食材情報なども掲載されている。

  • 価格:15,000円(税別)

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6. バイオシスラボとの「プレ・プロバイオティクス」分野において業務提携を開始 ~ PROUMED

PROUMEDは、プレバイオティクス・プロバイオティクス(以下 プレ・プロ)のサイエンスコミュニケーション事業を推進する藤田医科大学公認ベンチャー企業である株式会社バイオシスラボ(BIOSIS Lab.™︎)(愛知県豊明市、以下 BioL(ビオール)™︎)と「プレ・プロ」分野での業務提携を行った。

PROUMEDの腸内フローラ検査では、便秘や下痢の症状や生活習慣病などの疾患リスクから、睡眠やストレスの感じ易さのリスクまで幅広くわかり、その結果をもとに「プレ・プロ」商材や、食生活・生活習慣の改善を提案することが可能となる。
さらには、「プレ・プロ」商材の摂取状況や食生活・生活習慣の改善のモニタリング手段として、定期的な腸内フローラ検査を行うことが効果をより発揮する。

現在、様々な分野の企業とコラボレーションが進んでおり、幅広い分野にて本事業の展開が模索されている。事例として、動物病院向け腸活プロジェクト、観賞用動物(水族館・動物園)向け腸活プロジェクトなどもある。

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7. (株)FINAL ANSWER 獣医学分野におけるプレ・プロバイオティクスの活用を目指し藤田医科大学公認ベンチャー バイオシスラボとの本格的な業務提携を開始

株式会社FINAL ANSWER(神奈川県茅ヶ崎市)と藤田医科大学公認 プレバイオティクス・プロバイオティクス(プレ・プロ)啓発ベンチャー 株式会社バイオシスラボ(BIOSIS Lab.)がジョイントプロジェクトを開始。
動物細菌検査・獣医病院経営・獣医師派遣・獣医師教育事業など、同社のグループである株式会社1 sec社(神奈川県茅ヶ崎市)の獣医学領域におけるノウハウを最大活用し、近年注目されているプレ・プロを導入する獣医科向けサプリメント事業を本格的に推進することにより「動物を救い続ける」という使命を果たすことを目指す。

具体的な提供情報

このプロジェクトでは、プレ・プロを活用した獣医学領域でのプレ・プロをベースとした腸内改善ヘルスケア製品(サプリメント・化粧品)および細菌叢の変化を的確に診断する検査サービスを提供する。具体的には以下の内容が含まれる。

  • 腸内環境のバランスを考えたサプリメント製品
    強力な独自のプレバイオティクスとプロバイオティクスを使用したオリジナル製品を提供する。動物の腸内環境をサポートするため、使いやすいタブレットタイプのプレバイオティクスや、動物病院専用に特化した外用化粧品製品の提供を行っている。

  • 腸内環境の検査
    獣医学分野に特化した独自のA I技術を有するシステムに基づき、動物の腸内環境のバランスに大きく影響を与える細菌群をアルゴリズム解析し腸内全体のバランスを分析することで現状の状態を確認する。

  • 社会貢献活動
    YouTubeを通じて飼い主に正しい知識を広め、また全国各地で動物病院従事者向けの無料セミナーを開催することで、獣医療のレベル向上に積極的に貢献していく。
    YouTube:https://www.youtube.com/@pet_skin

株式会社FINAL ANSWERについて

同社のグループであり、動物病院向けの細菌検査・動物病院経営・メディア/教育事業など、多岐に渡る獣医学領域の展開を行ってきた(株)1 sec社のノウハウを元に、獣医学領域ではカバーできないヘルスケア領域をカバーし、動物たちの最後の答え(FINAL ANSWER)となることを目標に2021年に設立された。
ペットの生活習慣の多様化や長寿化がはじまった社会を迎え、ただ獣医学的治療や高度医療サービスを提供するのではなく、動物にとって、そして家族にとって快適な日々を過ごしていただけるのかを追求してきた。その結果、近年、注目の研究である腸内をはじめとする常在細菌叢およびその環境をコントロールできるプレ・プロを用いたヘルスケア分野に着目し、新たな事業展開を開始した。

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8. 腸内細菌由来の遺伝子を用いた疾患リスク評価法を開発 -免疫疾患・精神疾患の非侵襲的診断への応用に期待 ~ 藤田医科大

藤田医科大学 消化器内科学、医科プレ・プロバイオティクス講座(廣岡芳樹教授)らの研究グループは、腸内細菌が持つ特定の遺伝子(nan遺伝子(腸内細菌が持つ遺伝子の一つで、特にムチン分解酵素の生合成に関与する))を定量的に測定することで、免疫疾患や精神疾患のリスクを非侵襲的かつ迅速に評価する新たな手法を開発した。
この手法は、特にムチン分解に関連する腸内細菌のひとつRuminococcus gnavus (R. gnavus)などのLachnospiraceae科の細菌に着目している。

研究のポイント

  • nan遺伝子の検出: 腸内細菌のnanA遺伝子に特異的なプライマーセットを設計し、次世代シーケンシング(NGS)でR. gnavusやBlautia、Dorea属などのLachnospiraceae科細菌の存在を確認した。

  • 疾患との関連性:アレルギー誘発マウスと攻撃的行動を示す犬さらに潰瘍性大腸炎(UC)患者のサンプルを解析した結果、nan遺伝子レベルが疾患の状態と関連していることが示された。

  • 非侵襲的評価:糞便サンプルを用いたnan遺伝子の定量的PCR(qPCR)測定により、免疫疾患や精神疾患のリスクを非侵襲的に評価できる可能性が示唆された。

  • 未処理のマウスと比較してアレルギースコアが低いことが知られているフルクタンで処理されたアレルギー誘発マウスは、nanレベルが大幅に低下した。

  • 攻撃的な犬のnanレベルは、非攻撃的な犬のnanレベルよりも大幅に高かった。

  • UC患者のnanレベルも、健康な対照群と比較して大幅に上昇した。

今後の展望

本研究で開発されたnan遺伝子のqPCR測定法は、非侵襲的かつ迅速に疾患リスクを評価する手法として広く応用される可能性がある。特に、免疫疾患や精神疾患の早期診断、さらには予防的な介入のためのツールとして期待される。今後、さらに大規模な臨床研究を実施し、本手法の実用性を高めることを目指す。

研究成果は、Microbiology Research Journal Internationalに掲載された。
論文タイトル:Assessment of Risk for Immune and Psychiatric Disorders Using qPCR-Based Monitoring of the nan Gene in Gut Microbiota: A Non-invasive Approach
(qPCRを用いた腸内細菌叢中のnan遺伝子のモニタリングによる免疫疾患および精神疾患のリスク評価: 非侵襲的アプローチ)
Microbiol Res J Int. 2024;34(11) 107-119 doi: 10.9734/mrji/2024/v34i111503

出典:2025.1.15 藤田医科大学 プレスリリース
腸内細菌由来の遺伝子を用いた疾患リスク評価法を開発

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