新しい検査・診断法~その2

唾液での糖尿病検査、イヌのフレイル評価ツール、ネコの脳波診断、動物用がん早期検出装置を紹介します。
M Tsuda 2025.01.15
誰でも

目次

  • 唾液による非侵襲な血糖モニタリング法

  • 高齢犬のフレイル評価ツールの開発

  • ネコの脳波診断

  • 動物用がん早期検出装置

1. 唾液による非侵襲な血糖モニタリング法 ~ 東京大、熊本大

糖尿病管理指標のグリコアルブミンは唾液でも血液と同等に測定可能

  • 採血不要な糖尿病管理手法として、高速液体クロマトグラフィーを用いた唾液グリコアルブミン(GA)検査法を確立。

  • この方法を用いて糖尿病患者の入院中の GA 値測定を観察研究として実施。

  • 測定した唾液GA値は、従来の血液GA値と高い相関を示したことから、今後針刺し不要かつ信頼性の高い糖尿病管理指標としての活用が期待されます。

1型糖尿病患者、2型糖尿病患者合わせて56名の各3回の採取検体(計168検体)のうち、144検体を解析した結果、入院時における空腹時採取(n=45, R2=0.985)、入院時の食後2時間での採取(n=48, R2=0.973)、退院時における空腹時採取(n=51, R2=0.979)と、いずれも非常に高い決定係数が得られました。また共変量として BMI や糖尿病腎症ステージで補正した多変量解析でも同様に有意な相関がみられました。

本研究から、非侵襲的に採取できる唾液検体を用いて、従来の臨床検査とほぼ同等の精度でGA 検査が可能なことが明らかとなりました。この検査法を、研究グループがこれまでに開発してきた指頭血の郵送検査の手法と組み合わせることで、将来、週1回の在宅唾液GAモニタリングに発展させられる可能性もあります。これらにより、従来の検査法を補完できる完全非侵襲な糖尿病血糖管理法の実現が期待されます。

研究成果は、Diabetes Research and Clinical Practiceに掲載されました。
論文タイトル:Salivary glycated albumin could be as reliable a marker of glycemic control as blood glycated albumin in people with diabetes
(唾液中のグリコアルブミンは、糖尿病患者における血中グリコアルブミンと同様に、血糖コントロールの信頼できる指標となる可能性がある)
Diabetes Res Clin Pract. 2024 Dec:218:111903. doi: 10.1016/j.diabres.2024.111903.
PMID: 39447680

2. 高齢犬のフレイル評価ツールの開発 ~ North Carolina State University

  • 人間のフレイル(筋力低下、歩行速度低下、体重減少、疲労、活動低下)に基づき、犬にも適用可能な指標を開発。

  • 飼い主への質問を通じて、栄養状態、疲労/エネルギーレベル、移動能力、筋肉状態、社会的活動を評価。

  • 臨床検査を必要とせず、獣医師が簡単に使えるツール。触診で筋肉や体の状態を評価可能。

  • ツールは、体および筋肉状態の簡単な評価と組み合わせることで、6か月以内の死亡リスクを予測。治療や生活の質に関する判断をサポート。

  • 39頭の神経老化研究参加犬と198頭の10歳以上の犬を対象にツールを検証。3項目以上でフレイルと分類された犬は、6か月以内の死亡リスクが2倍。

  • 純血種の犬は雑種犬と比べて死亡リスクが1.85倍高い。

  • 高齢犬のケアオプションを議論する際の出発点として、飼い主と獣医師に役立つと期待される。

研究成果は、Frontiers in Veterinary Scienceに掲載されました。
論文タイトル:Establishing a clinically applicable frailty phenotype screening tool for aging dogs
(高齢犬のフレイル表現型スクリーニングツールの臨床応用の確立)
Front Vet Sci.  2024 Sep 25:11:1335463. doi: 10.3389/fvets.2024.1335463.
PMID: 39391218

出典:New Tool Can Assess Elderly Dogs’ Frailty
2024.9.30 North Carolina State University

3. ネコの脳波診断 ~ University of Montreal

(1) 研究背景と目的

  • モントリオール大学の獣医学部の研究者たちが、覚醒状態の猫の脳をスキャンする新しい方法を開発。

  • 目的は、慢性疼痛(例えば変形性関節症)の評価を容易にすること。

(2) 研究方法

  • 特別に編まれた毛糸の帽子に電極を隠して装着することで、猫が覚醒状態で脳波(EEG)を測定できるようにする。

  • 通常は、電極が装着された場合、猫はそれを振り落としたり噛んだりするため、鎮静を必要としていた。

(3) 被験動物

  変形性関節症の成猫11匹

(4) 結果

  • 電極を固定するための毛糸帽子の使用は成功し、ストレスや痛みの評価が可能になった。

  • 電極を通じて刺激を与えた後、色のついた光や心地よい香りを使って猫をリラックスさせる試みも実施。

(5) 研究の意義、今後の展開

  • この技術は、猫の慢性疼痛と感覚刺激を用いた緩和の研究に新しい可能性をもたらす。

  • 今後は、痛みの特有の脳波パターン(EEGシグネチャー)を確立し、自動化された慢性疼痛検出技術の開発を目指す。

  • 他の応用例として、猫や犬と飼い主の間での脳波の同期性研究を計画中。

  • 私企業との提携を通じ、カナダ自然科学・工学研究会議(NSERC)の助成金を申請予定。

研究成果は、 Journal of Neuroscience Methodsに掲載されました。
論文タイトル:Non-invasive electroencephalography in awake cats: Feasibility and application to sensory processing in chronic pain
(覚醒ネコにおける非侵襲的脳波検査:慢性疼痛における感覚処理への実現可能性と応用)
J Neurosci Methods. 2024 Nov:411:110254. doi: 10.1016/j.jneumeth.2024.110254.
PMID: 39173717

出典:Recording the cats in the hats
2024.9.25 University of Montrea

4. 動物用がん早期検出装置 ~ 韓国 全北大学校

  • 動物体内に蛍光物質を注射し、がん細胞を選択的に標識してイメージングする技術を用いたデバイス。ペットの健康管理に特化した設計。

  • 既存の人体用血栓検出装置の原理に基づいて開発。

  • 装置の有効性と精度はハーバード大学医学部との共同臨床試験を通じて検証された。

  • CES 2025イノベーションアワードをデジタルヘルス部門で受賞(2年連続)

  • 装置は、1月7日から10日まで米国ラスベガスで開催されるCES 2025のユーレカ・パー​​クおよびイノベーション・アワード・ショーケースで展示される。

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